野蚕のアヴァニ
インド, ムガ蚕, エリ蚕, タッサー蚕, 天蚕、野蚕、ワイルド シルク、草木染め 
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INTERVIEW with Rajnish Jain
今回奥さんのラシュミさんがアメリカとフランスに出張中のためご主人のラジュニッシュさんが、説明や案内をしてくださいました。通訳は渡辺教授です。とてもわかりやすい通訳でした。
アヴァニの立ち上げ。
どのようにしてアヴァニを立ち上げましたか?
ラジュニッシュ 1996年12月に、妻であるラシュミと私はこの地域に旅行に来ました。遠くにヒマラヤ連山がきれいに見えて、桃源郷のような自然があり、あまりの美しさに魅了されてしまいました。私たち夫婦は常々都会の喧騒を離れ、意味ある人生を送り、人々の助けをしたいと思っていましたから、この地域で生活をすることを決意しました。
私たちはラジャスタン州で太陽エネルギー普及のNGOで仕事をしていました。このクマオン地方にはまだ電気が開通していなかったので、地域の人を助ける仕事として、まずクリーンなエネルギーの太陽光発電を提供しようと考えたのです。
1996年にアヴァニをスタートした頃のクマオン地方の実情はどうでしたか?
ラジュニッシュ 晴れている日に遠くに見えるヒマラヤ連山の向こう側はチベット国。過去何百年もチベットとの交流は自由でしたから、チベット国側からチベット人が山を越えて絹などの物資をクマオン地方に運び、その絹糸で機(はた)織りをしたり、物資を販売したりして長年、村の生活がなりたっていました。ところが1962年にインドと中国との中印国境紛争がおこり、ヒマラヤ山脈が戦いの舞台となりました。結果は中国がチベットを支配下におき、以後チベットとの行き来が封鎖されてしまったのです。
クマオン地方の人々は、その後も機織り技能で生計をたてていましたが、工場生産の化学繊維が市場に普及し始め、伝統的技術が廃れていきました。その中で現金収入を得るために若者や男は都会に出稼ぎに行くようになり、村は年寄りと女、子供だけになり荒廃してきていました。
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雨季の終わりの時期で、雨上がりの後に虹を見ることができました。
太陽は誰にでも平等に降り注ぐ。
クマオン地方に来られて、まず最初にお二人でされたことは何ですか?
ラジュニッシュ 土地の購入です。現在のアヴァニがあるクマオン地方トリピュラデヴィ・センターの土地を村から購入しました。
最初の3年間は太陽光発電機の普及に努めました。今まで、インド・ラジャスタン州のNGOで、太陽光発電普及の仕事をしていましたから、その経験をいかして、根気強く太陽光エネルギーの普及を村人にすすめ指導してきました。それまで村の人々は灯油ランプを使い、いつも煙たく薄暗い部屋の中で生活をしていたのです。NGOからの資金援助も受けました。
現在25の村の1700世帯に太陽光発電システム(発電量40kW)を導入し、一日に約8時間、電気を利用することが可能になったのです。
*どのようにして村人に太陽光発電システムを導入することを受け入れてもらえたのか。3年間の奮闘の詳しい情報はこちらをご参照ください。
現金収入の仕事をつくることや、
技術指導などをするシステムを
つくりました。
ラジュニッシュ 村人にとって必要なのは、現金収入でした。村人のニーズに応える必要がありました。インドでは「若者と雨水は都会に行ってしまう」との諺があります。若者を村にととどめるためには、仕事をつくること、技術指導をすることでした。
伝統技術の復活
この地域にもともとあった糸つむぎと機織りを復活させることにしました。忘れさられていた自然染色の技術の復活、新しい技術、デザイン、現代的な色、昔あった技術や草木染めに価値があることを教えることにしたのです。
フェアトレードの実施
製品を作るのに、工場や作業場に、遠くから人を集めて作らせるのではなく、自宅で農業ができて、近くで機織り作業ができて、現金収入が得られて、家族とともに暮らせることをめざしました。これこそがフェアトレードだと考えました。
現在、山岳地帯の25の村に糸つむぎ、機織りのセンターがあり、そこで近くの村人が働いています。できあがった製品は適正価格でアヴァニが買い取るシステムです。
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センターから一番近い山岳地にある作業所へ向かう道。車で2時間、さらに山の中を約40分歩いて、山岳村にある作業場へ向かう学生たちです。
 
ご主人のラジュニッシュさん。


アヴァニの出発点は、インド・ラジャスタン州のNGO「ソイルワーク・アンド・リサーチセンター(The Soil Work and Research Centre)」から始まりました。このNGOで、電気の通らない村に太陽光システムの導入を行っていたラシュミとラジュニッシュによって、1996年、このNGOの支部としてインド・ウッタランチャル州トリプゥラデヴィに設立されたのがアヴァニでした。

遠くに見えるヒマラヤ連山。

ミーティング風景。

トリピュラデヴィ・センターの事務所や食堂がある建物。

トリピュラデヴィ・センター内の各家にソーラーパネルが取り付けられています。

糸つむぎの仕事。

染色技術の復活。
染色用の植物。

機織りの仕事。

山岳地の作業場で村人と学生と記念撮影をしました。渡辺教授教室のゼミ学生はフェアトレードの勉強をしています。